刺絡から考える慢性上咽頭炎

のどの不調を訴える人は多いです。

慢性上咽頭炎という病名がつけられる人が最近では多く、Bスポット療法を受けてきた人をよく見かけます。

たくさん出血して不調が治るという人もいますが、そうでない人もいます。あまり出血がない人。出血した割に改善しない人もいます。

その謎について刺絡の視点から考えてみたいと思います。


刺絡とは鍼灸治療の一部であり、医師と鍼師だけができる治療法です。どういうことをするのかを分かりやすく言えば、鬱血部から少量の血を取ります。下の写真の様な感じです。

専門的な正しさからいえば、「血」ではなく「邪気」を抜いています。血にのせて邪気を抜くと古代人は考えていたからです。現代の常識からすればオカルティズムだと思われるかもしれませんが、わたしはこの考えの方が真実に近いと思います。少なくとも臨床的です。なぜなら邪気がない時に血を抜いても大して効果がでないからです。

「故刺諸絡脉者必刺其結上甚血者雖無結急取之以瀉其邪而出其血」『霊枢』経脈篇
「血実すれば、宜しく之を決すべし」『素問』陰陽応象大論

邪気がある時に血を取るからこそ絶大な効果が出ます。魚がいない海に釣竿を垂れても魚は釣れない。それと同じです。


そういった違いがあるので、私が所属するグループでは邪気が血に乗った状態を瘀血と呼び、邪気が乗っていないただの鬱血は古血と言い分けています。虚ならば補い、実ならば瀉すのが原則です。しかし、鍼灸の世界ではそんなことを言っている人たちは他にはいませんので、ここでの話です。

業界においてもこの辺の概念が混乱してます。瘀血・血瘀・古血・悪血、全部同じということになっている。邪気がなくても瘀血と呼ぶ人も多く、ただ血を抜けば刺絡になると思われている。

そういう鍼灸師がほとんどなのですが、悪く言いたいのではなく現状を説いています。瘀血と古血の違いの話はここだけの話であり、一般的ではないというお断りです。


邪気は肉眼で確認できません。触っても脈をみても分からない。なので、なかったことになっています。とりあえず鬱血を見たら刺絡をする。そんな調子だから思ったよりも効かない。またはやたらと疲れる。これを好転反応と呼ぶのは間違いだと思います。適切であったかどうか考えてみる必要があります。

刺絡は、当たるも八卦当たらぬも八卦の単なる出血療法と化しています。

患者さんたちの話を聞いていると、それと同じような事がBスポット療法でも起きているように思えます。


Bスポット療法で上咽頭に炎症や新生血管があればそれを目標に出血させています。瘀血性の病気であれば、上咽頭からの出血で改善が見込めると思います。ただ、そこに邪気があればということになります。


ですが、ドクターに「わたしの上咽頭に邪気はありそうですか?」などとは間違っても聞かないようにしてください。頭のおかしい人だと思われておしまいです。

頭がおかしいのは、わたしを含めた一部の人たちだけです。


邪気がないのに何十回、血を抜いたってしょうがないという話でした。


探花逢源

福岡県福岡市 誠花堂院長のブログ