2026.05.14 03:30現代の「髄海不足」— コロナ後遺症とビタミンD、そして腎精の関係今日は、国立大学法人・岡山大学が発表した「コロナ後遺症診療におけるビタミンD測定の意義」という興味深いテーマを、東洋医学のレンズで読み解いてみたいと思います。コロナ後遺症で悩む方々が訴える、抜けない疲労感や「ブレインフォグ(脳の霧)」。これらを東洋医学の視点から見つめ直すと、ある一つのキーワードが鮮明に見えてきました。それが「髄海不足(ずいかいふそく)」です。1. 「腎」は骨を主り、髄を生じ、脳に通じる東洋医学には、数千年前から伝わる身体の設計図があります。「腎主骨、骨生髄、髄通於脳」(腎は骨を司り、骨は髄を生み、髄は脳へと通じている)私たちの生命力の源である「腎(じん)」が蓄えているエネルギーを「精(せい)」と呼びます。この「精」が形を変えたものが、...
2026.04.19 00:45古代中世における吐法2月は安田無観先生が来福され、吐法の歴史をざっと概観して頂きました。黄帝内経素問の時代にはあった吐法は次第に廃れていったこと。それを金代に張子和が古道を遡って再興したこと。この辺は舘野正美氏の「日本漢方医学における吐方について:江戸時代医学の一様相」にも詳しいです。また、この論文では吐法を継いだ喜多村良宅の臨床の一端も伺えて参考になりました。〈吐証候法〉では吐方の適応について述べるが、その場合、疾病の根源が〈心胸〉にあって、所謂〈巨里の動〉即ち心尖拍動が上亢して(動機がはげしくなり)〈䊡中〉(胸元)や〈缺盆〉(喉元)にまで至る者が〈宜吐之候〉(吐するに宜しきの候)であり、〈䊡中無動者〉(䊡中に動なき者)には吐方を講じてはならない(喜多村, 1817: ...
2026.04.09 05:25鍼は刺さなくても効果がある?「びっこを引く股関節痛」が翌朝に癒えた理由 | 鍼灸院 誠花堂 福岡市 薬院駅ジャンプした後の着地時に股関節を痛めたという中学生。放っておけば治るだろうと、1週間放置していたが治らない。歩くのも痛くてびっこを引いている。股関節を伸展しても痛むが、足を持ち上げるのもつらい。普通、筋を痛めた状態だというと思います。で、普通はここに鍼を何Cm指して、何々筋に当てるとかそういう話になると思うのですが、それがすべてではないという話です。鍼が猛烈に怖いというので、鍉鍼を使って施術をしました。鍉鍼とはつまようじのような形をしています。刺さらない鍼です。その刺さらない鍉鍼でやりました。だから、私はこの中学生に鍼はしましたが、刺していないんです。そういうと驚く人も多いのですが、鍼は必ず刺して使うものだと思っている。この症例では患部にも、物理的には...
2026.03.26 04:25ハイテク機器が見落とした「一目瞭然の違和感」とは | 鍼灸院 誠花堂 福岡市 薬院駅原因不明の腹痛が10カ月ほど前から続くそうです。大腸、胃、子宮・卵巣も検査して頂いたものの、原因がわからない。CTにもMRIにも映らない。血液検査をしても異常がない。気のせいでしょう、という話になりがちな話。結局、一回の施術でほとんどよくなってしまった。ちょっと触ってみたら、「ここだ」というところが一目瞭然過ぎる。逆に一体なにがそれほど大ごとだったかのか。「散々検査してもらうことで、よく見て貰っている」と勘違いしがちですが、しかし、今の医療では触診をあまりしません。ハイテク機器で見ることの方がより正確で確実な、正規の医療であるような錯覚を医療者も患者側も持っている。ちょっとでも実際に触ってみれば、少なくとも「なにかおかしい」くらいには気づけるチャンスが...
2026.01.22 00:45緑内障と小腸経40歳以上では5人に1人が緑内障罹患者らしく、確かに眼圧が高くて悩んでいる方は多いです。『霊枢』手の太陽小腸経の病証篇には「目黄」の記載があります。そのまま素直に受け取ると、目が黄色くなる症状に対してだけ効くと解釈できますが、実際のところ、緑内障にも効くようです。黄疸症状と緑内障は別々の病気なのでそれぞれは無関係です。なので、病名横断的な視点がないと意味不明になるかとは思いますが、その壁を横断させうるのが東洋医学の知恵であり良さです。手の太陽小腸経の流注と目との関連で言えば、側頭部は重要です。手の太陽小腸経は、その支脈において目の”鋭眦”と”内眦”に至り、眼の内から外から挟み込む形になっていることに改めて気づきました。この事からも手の太陽小腸経は目との...
2025.12.25 01:00そんじゃそこらじゃないモノ「便秘が治るツボを教えてください」と聞かれることがあります。しかし残念ながら、ここに鍼をすれば便秘が治る等という確実なものはありません。人は確実なものを求めたがりますが、不確実なのがこの世界の現実です。特に人体においては、なおさらです。「そんじゃそこらの便秘ではない」のだそうです。西洋薬よりも漢方を頼り、それも大承気湯というかなり強い下剤も服用してきたし、針灸治療も10件以上のさまざまなところで受けてこられた。有名な先生方に散々施術をして頂いてきた。それでもだめだった。なので失礼ですが正直なところ、誠花堂でそれほどすぐに効果が出るとは期待はしてはいないし、仕方がないものなのだと思っている。でも何年かかってでも治したいのでお願いしますという。それほどの便...
2025.11.27 03:47段階があるということ先日、お越しになられた方も、コロナ後遺症が潜んでいたケースでした。断定はできませんが、時期と状態からするとおそらくそうなのでしょう。思いもよらないとはこのことで、本人はまったく原因として症状と結び付けてはいませんでした。しかし、ちゃんと経緯を聴いたり、身体所見を取ったのでこういうことがいえます。咽鼻の不調と胸の重苦しさが主訴ですが、よくあるセットです。逆流性食道炎という病名が付いている人も多い。ただ、この病名が落とし穴です。陰陽虚実なんてなにも考えられていない。自己紹介する時に「私は人間です」と言うくらいに意味がない。深い部分が傷ついている場合があり、後遺症の治療は東洋医学をもってしても大変です。あとから少陽病、陽明病の治療をしてももう遅いので、もっと...
2025.11.20 03:47同業者を救った数回の施術。葛根湯も柴胡剤も合わない難治性の病態への回答 | 鍼灸院 誠花堂 福岡市 薬院駅2回目のコロナにかかったという鍼灸師さん。麻黄湯を飲んだり、自分で鍼をしてみたそうですが、まったく治らないという。診てみると陰病に陥っていました。生命レベルが相当に落ち込んでいる状態です。こういう人は通り一遍の風邪薬なんかでは良くなりません。葛根湯、麻黄湯などもっての外。柴胡剤も白虎加人参湯でも合いません。これらは初期に攻めていくのにはいいですが、もうこういった治療が合わないところまできています。結局、数回の施術で回復したのですが、うまくやれればこのくらいのことは鍼でできます。病には時期と位置があり、そういうことを見ないで鍼をしても効果は期待できません。逆にそういう視点で見てあげれば、すべてではないにせよ、回復させてあげられるものが多くあると思います。...
2025.11.06 03:26あなたの身体は「雑草を抜く段階」か、それとも「土を耕す段階」か。快復までの時間軸 | 鍼灸院 誠花堂 福岡市 薬院駅健康が回復するまでに時間がかかる人、かからない人。その違いはなにか。よく聞かれることです。ふと思いつき、庭の手入れに例えるとわかりやすいかなと思い、書いてました。あるお庭Aは雑草がぼうぼうな上、ゴミが散乱しています。なので、雑草を抜いて要らない物を処分すれば綺麗になります。あるお庭Bは大地が枯れ活力を失い、荒廃しています。大地を耕し肥料を撒いて、お花を育てたりしないと綺麗になりません。前者Aは、雑草を抜いたりするだけで綺麗になるので、言ってしまえばすぐ終わります。時間がかかるのは後者Bの方で、種を撒いて芽が出て育つまでにはどうしたって時間がかかります。途中で枯れることもあります。治療はこれに似てます。要らないものを取り除くだけで回復する人なら、治療は簡...
2025.11.01 09:55伝説の名医・扁鵲(へんじゃく)に学ぶ診察法。お勉強の先にある「効く鍼」への挑戦 | 鍼灸院 誠花堂鼻づまりだそうです。肺虚と脾虚がありますが、右大都穴の瀉法でつまりが取れました。これは「氷で風呂を沸かす」くらいのおかしな理屈なのですが、こういう事が現実にあります。しかし、ここには少し嘘があるというか、ある限界があります。勉強しない鍼灸師は話になりませんが、あまりお勉強をしすぎても、こういうロジックから抜け出せなくなります。頭でっかちになりすぎると現実が見えなくなり、迷信に近い鍼になったりします。効いたり効かなかったり不安定になりなる理由の一つです。ではどうすればいいのか。お笑いになるかもしれませんが実際の所、現場で闘う鍼灸師は真剣に悩んでいます。どうやってそこを脱却していけばいいのか。そういうお話を10月の東京でお話させて頂く機会がありました。扁鵲...
2025.10.01 05:30過活動膀胱の民間療法「過活動膀胱なんです」という方は少なくありません。鍼でも良くなりますが、過活動膀胱といっても虚実があり、すぐ良くなる人とあまり効果が出ない人がいます。先日、誠花堂の蔵書整理をしていたところ、長塩容伸氏の『症状別、病気別 民間薬療法』が出てきました。そこでは「頻尿」についてどう対処しているのか。いくつか方法が書かれてありますが、この本ならではの珍しい方法もありました。「カマキリを生きたまま2匹すりつぶし、小麦粉とねり合わせて布にのばし、足の土踏まずにはって包帯をしておく」等という方法です。不思議ですね。どうしてこの方法で効果があるのだろう。または「ヤマノイモをとろろにして毎日食べる」ともありました。カマキリのハードルが高すぎる。「尿閉」についても見てみま...
2025.08.24 00:43避けられないもの私は仏教徒という訳ではありませんが、医療者として考えさせられる言葉があったので、それを題材にお話してみたいと思います。人生には避けられぬ人生の苦しみとして「生老病死」があるそうです。医王と呼ばれたお釈迦さまの「四苦」の教えです。しかし、それを知った時、「未病」を唱える東洋医学者としては、「病は死と同じく避けられぬものなのか」とショックを受け、心に残りました。現代のように複雑で荒んだ時代を生きていく事は、ある意味で戦いです。「終わりの見えないマラソンのようだ」という人もいます。生きていくうえで、無理をせねばならない場面はたくさんあります。やってられないと思うことあります。息抜きに身体に悪い物だって食べたくなります。その場しのぎであろうと、身を削ろうと、生...