吐方と慢性上咽頭炎

慢性上咽頭炎の治療をしていると、回復期の中盤から終盤にかけて痰をたくさん吐出する場合があります。今日も「前回治療後、オレンジ色の痰をたくさん吐いた」という報告を受けましたが、そういうことがあります。

この現象がなぜ起きるのかを考えてみると、吐き出すべきものが上手く吐き出せていなかった人が、体力が回復するにつれてそれを吐き出せるようになってきた、、ということなんだと思います。


上手く吐きだせないとはどういうことか。例えば「のどに張り付くような痰があって吐き出せない」という場合がよくあります。とても乾いている。それが治療をしていると、それが潤ってきます。

咽頭部の細胞組織を内から潤すように分泌物が湧き、咽に染みつきへばり付いた痰が染み出してくるイメージを私はもっています。そうして少しづつ剥がれるように排出していく。回復してくると簡単に吐き出せるようになるというのはそういう訳です。そして出し終わればそのうちに枯れていく。(うまく吐き出せず、飲み込む人もいますが)。


書きながら、ふと中神琴渓の『生生堂医譚』を思い出しました。紐解いてみると纏喉風(てんこうふう/ジフテリア)を吐方で治す例がありました。「粘っこい痰を一升ほど吐いた」とあり、かなりの量です。

(そういえば私も過去にこんな記事も書いていました。痰を大量に吐いた後で回復したという点に注目です。⇨神戸源蔵の鑱鍼


吐くというと胃の内容物を吐くイメージですが、咽の痰を吐かせるのも吐方の一種なのだなと改めて思いました。


吐くとはいっても延々と吐かせるのではなく、ある程度排毒が収まれば症状は落ち着きます。

ただ、毒を排出するにも体力がいるので体力がないか、または毒の停滞が強すぎる場合は自力で排毒もできない膠着状態に陥っています。毒を吐き出せず、内に抱えたままの状態ということです。そうなると自覚的には胸痛や胸苦しさが。循環器、呼吸器、免疫系、精神の疾患がでやすいです。

いわゆる慢性期、難症という場合はほとんどこういう状態にあります。


膠着状態を打破する熱量

膠着状態を打開するにはある程度の熱量がいります。鍼灸においては、お灸などを使って外部から熱量を送り込むやり方もありますし、体内で自家生産できるよう促したり様々な方法があります。漢方においては生薬の偏性を利用して反応を起こさせていきます。いずれにせよ回復過程では体温もが上がって発熱することがあります。そのときに痰の排出も盛んになってきたりします。

勢いと体力があれば一気一息に排毒し終わるのですが、体力が消耗しているとそうもいきません。一度排毒したあと小休止を挟み、体力の再充電を待ってから排毒プロセスが再開することもあります。つまり、何度かに小分けして毒が減っていく。

一気にどかっと減るのもきついのですが、ちまちま繰り返し続くのも辛いので、どちらが楽なのかなんとも言えないところです。




探花逢源

福岡県福岡市 誠花堂院長のブログ