2024.04.25 00:55お米は好きですか?Aさん曰く、補中益気湯、健脾散が合わない。そして、米を多く食べると胃が逆流するという。このことは非常に勉強になりました。Aさんにとって、これらはある点で共通した問題があります。わたしは薬膳には詳しくないので『食材効能大辞典』を頼りに言えば、米には補虚・散寒作用があるそうです。「お米を食べると元気が出る」という人がいますが、それは補虚として働いているといえます。確かにこういう人は虚している人に多いです。私自身はお米を食べて元気になった記憶はあまりない・・・。気が停滞しすく実的な傾向がある人が米を食べすぎるとお腹が張り、酷いと逆流してしまう。Aさんは実的な傾向があったといえます。だから補中益気湯も効かないのも当然です。でも外から見るとどこか弱弱しく虚してい...
2024.04.16 00:15憑き物に甘草瀉心湯『金匱要略』百合狐惑陰陽毒病脈証第三ここに狐惑の病について記述があります。狐惑の"狐"とは陰部にできた潰瘍を、"惑"とは喉にできた潰瘍のことを言い、症状としてはある種の精神異常を起こす病だと言われています。粘膜のただれなどという点でいえばベーチェット病のようなものにあたるのではと成書にはあります。夜中に起きて舞を舞う。それがまた気味が悪いくらい上手く踊るのだという。このままでは嫁にやることができないから、どうにか治してほしい。そうして、そんな娘を甘草瀉心湯で治したという話があります。甘草瀉心湯は基本的には消化器系の症状に使う薬方ということになっていますがこのような例に応用できると言うのが面白い。初めて読んだ当時は「そんなこともあるんだな」くらいで受けて...
2024.01.27 00:35随証治療と病名治療2前回、随証治療のすばらしさを説きました。それとは別に病名治療もあります。「痔の治療はこうすればいい、ここに鍼をすればいい」というものです。腰痛のツボ、生理痛のツボとか、慢性上咽頭炎のツボとかそういう思考です。とても素人的です。ですが、多くの専門家もこの程度の認識と知識で治療をしています。それがすごく嫌だったので、できるだけこういったやり方は避けてきました。しかし、時にこういう素人っぽいやり方の方が効くことがあります。わたしはそれを面白いと感じます。で。とあるBさんの場合。通常通りの治療をしても特にBさんの痔の改善はありませんでしたので、百会のお灸を加えてみることにしました。痔に百会穴の灸は有名なのです。そして確かに効果がありました。よく効いたとのこと。...
2024.01.20 01:07随証療法と病名治療わたしは痔にあまり詳しくありません。その割には治療成績はいい印象があります。痔の中でももっとも恐ろしいのが痔瘻です。それがわたしの治療によって「再発を防げている」といってたまにこられる方がいます。危うくなると体で分かるそうですが、治療後にはその感覚が去っていくそうです。特に痔瘻治療のメソッドなど持っていないので、はじめはどうしたものかと思いましたが、我々にできることは基本、証に合わせて治療をするのみです。そのまま治療をしました。しかし、それで対応できるのだから東洋医学は本当によくできていると思います。ただ、そのためには診察が絶対に要ります。脈を診るだけではなく舌も腹も診ますし、様々な角度から情報を合わせて原因を探ります。そのための訓練に多くの時間を割い...
2023.11.07 00:40吐方と慢性上咽頭炎2漢方において、汗吐下和(かん・と・げ・わ)という治法があります。「吐」方は吐かせる治療法であり、該当する薬方を催吐剤といいます。胃の内容物などを吐き出すことを指しますが、吐方はかなりきつい治療法だったらしく次第に廃れました。一方で、口内から痰を排出することで治癒していくという過程もまた、まさに吐法の一部なのではと前回述べました。上咽頭を病む場合、上咽頭単独で炎症がある場合もあるでしょうが、どうも下咽頭~食道あたりまで荒れていることはよく様子です。実際に目で見て確認することはできませんが、触診でもある程度の予測ができます。胸と腹を治さずに喉だけ治すことはできません。吐方の歴史は古く、『内経』『難経』にも記録があります。「髙き者は因りて之を越す」『素問』陰...
2023.11.04 00:19吐方と慢性上咽頭炎慢性上咽頭炎の治療をしていると、回復期の中盤から終盤にかけて痰をたくさん吐出する場合があります。今日も「前回治療後、オレンジ色の痰をたくさん吐いた」という報告を受けましたが、そういうことがあります。この現象がなぜ起きるのかを考えてみると、吐き出すべきものが上手く吐き出せていなかった人が、体力が回復するにつれてそれを吐き出せるようになってきた、、ということなんだと思います。上手く吐きだせないとはどういうことか。例えば「のどに張り付くような痰があって吐き出せない」という場合がよくあります。とても乾いている。それが治療をしていると、それが潤ってきます。咽頭部の細胞組織を内から潤すように分泌物が湧き、咽に染みつきへばり付いた痰が染み出してくるイメージを私はもっ...
2023.07.11 01:16梅雨の湿疹2抗生剤によって腸内細菌の菌交代現象が起こっても湿疹はよく出るようです。その現れるラインや分布をみていると、意味を見て取ることができたりします。ある人は足の陽明胃経沿いに湿疹が出ていました。脾胃の失調が根底にある湿疹。湿気は脾胃との親和性があります。抗生剤により脾胃の気がやられていたところに湿邪に入られ発症したとも言えます。お灸がいいですが、鍼もいいです。
2022.12.23 09:26緊張すると腹痛下痢テストなどで緊張すると決まって腹痛がするという女子大生です。しばらく調子が良かったらしく、数か月ぶりの来院でした。病状は複雑で、陰陽虚実錯綜しています。核心部分では回復していない。または新たな刺激を受けて、新たにこじれていることもあります。推してダメなら引いてみろで、あの手この手を駆使しながら治療していくことになります。
2022.12.22 08:14緊張しても大丈夫鍼を始めてから、緊張性の腹痛・下痢が減ったという報告を受けました。大学の先生で、眼精疲労と頭重感がそもそもの主訴でした。お腹に鍼を打っていませんし、お腹を治そうとは思ってやっていたわけではありませんが、結果としてそういうことが起きていたとのこと。まぁそうなるだろうなとは思いました。ストレス耐性が付いた、とも言えます。また心持の問題というかコツがあります。今回はそういうこと抜きでよくなりました。
2022.12.20 03:00緊張するとお腹が痛い発表の前、会議の前。精神的な緊張がおこると下痢をする、腹痛があるという人がいます。というか、結構多いと思います。原因不明の腹痛と下痢。過敏性腸症候群という名でくくられていますが、原因は不明です。いままで治療してきた中で、あらゆる方法を試みたもののまったく変わらない、効果が出せなかった人もいます。症状の一部が良くなる人もいますし、短期間でかなり良くなるという人もいます。かなり差があります。所見からうかがえる”こじれ具合”も重要ですが、見えるものだけではないようです。
2022.09.22 03:13忘れ去られた胃のむかつき主訴:胃のむかつき、首肩のこりそれがかなり辛いという訴えです。2人目出産後に風邪を引いてから不調で、医師によれば胃腸の風邪、逆流性食道炎とのこと。拝見すると、心胸中に熱、中焦に寒あり。下痢はない。腹痛もなく、黄連湯証に近いです。脾経、膀胱経、肺経で引き針しました。胸腹の寒熱の状態が、7割ほど正常化したところで止めます。翌週の話です。私「その後どうでしたか?」A「変わりません」私「胃のむかつき、首肩の辛さは変わりませんか」A「あ、忘れてました!ありません!」とても元気そうです。その後数回続けて施術をさせて頂きました。