漢方において、汗吐下和(かん・と・げ・わ)という治法があります。
「吐」方は吐かせる治療法であり、該当する薬方を催吐剤といいます。
胃の内容物などを吐き出すことを指しますが、吐方はかなりきつい治療法だったらしく次第に廃れました。
一方で、口内から痰を排出することで治癒していくという過程もまた、まさに吐法の一部なのではと前回述べました。
上咽頭を病む場合、上咽頭単独で炎症がある場合もあるでしょうが、どうも下咽頭~食道あたりまで荒れていることはよく様子です。実際に目で見て確認することはできませんが、触診でもある程度の予測ができます。胸と腹を治さずに喉だけ治すことはできません。
吐方の歴史は古く、『内経』『難経』にも記録があります。
「髙き者は因りて之を越す」『素問』陰陽応象大論
胸の方に毒がある者は吐かせなさい。越は吐くことだと解釈されています。
「上部脈有り、下部脈なきは、其の人当に吐すべし」『難経』
上部の脈は寸部を意味し、ここでは胸中の実を示しています。
吐方は越す、達す、湧、泄という字を当てている事もあります。
胸の辺りの毒がある場合は「上」から吐出した方が物理的距離が近いのもあり適切です。上にあるモノを下から下すには遠いですからね。なのでこれらの古典の記述は常識的にも正しいと思います。
鍼の場合は漢方と違い、吐方みたいな方法があるわけではありません。ただ、身体機能が回復した結果として吐くべきものは吐くのだと思います。そのため上にあるモノは自然と上から吐くことになると考えです。
そして、この吐き出されるモノを「痰」といいますが、東洋医学がいう痰は、一般に言う痰よりも複雑で広い意味を含んでいます。
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