私が始めて臨床デビューした患者さんはなんと、隠れ狭心症でした。
当時私はかなり大所帯の鍼灸クリニックに在籍していまして、そこのリーダーが「いつもの肩こりだから大丈夫。大きな不調も持病もない方だからやってごらん」と常連の中年女性を私にあてて下さった。その女性はお人柄もよく優しい方でした。新卒のルーキーが担当するにはこの上なく安心・安全なデビューとなるはずでした。
緊張しつつも診察させて頂くと、「肩が凝る」というか「痛い」というべきレベルらしく、事前に聞いていたよりも具合も悪そうです。そしてその痛みは15分程度で収まるものの、ここ数日、急に現れているという。
う~む。これは本当に肩こりなのだろうか?
「その”痛さ”は、今までの肩こりと同じような感じですか?」と伺うとと、「同じだけど、最近はやたらきつい」というお話だったと思います。
その頃ちょうど、勉強会で教わった「肩こりに隠れた心疾患」じゃないかと疑い、脈を診ると不整脈があり、お腹を触っても動悸がある。聞くところによると胸苦しさや動悸もするらしい。動くときつい。でも、そんなものは鍼灸施術には関係がないと考えたらしく、いわなかったという。
「ぜんぜん、”いつもの肩こり”じゃないじゃん!!」
教科書的で典型的な狭心症でした。
いやしの道の講習で「こうやって肩こりが辛いからといってマッサージや鍼を受けに来たりする人のなかに心疾患が隠れているから、よく注意するように」と教えて頂いていたまんま。対処法も合わせて聴いていたので、その場で動悸も肩の痛みもほとんどなくなりました。
このまま「循環器科に行って必ず相談するように」と患者さんに声をかけ、リーダーには「いつもの肩こりじゃないじゃないですか!」と報告したという思い出です。恐ろしいデビュー戦でした。
狭心症「くらい」と言い方がいいかは分かりませんが、疑わしい訴えを幾度も鍼で収めてきました。熟練すれば、そのくらいのことはさほど難しいものではない。
軽い心筋梗塞くらいまでなら応急処置をしたことがあります。先の『霊枢』によれば不治の真心痛、鍼をすべからず、という事になるのでしょうが、だからと言ってなにもできない訳ではない。この時、わたしはやむを得ず応急処置的に鍼をして対処をしましたが、その時も非常によく効きました。とはいえ、普通はそのままに病院へ送る方がいいと思います。
動悸・息ぎれ・不整脈に対する当院の取り組み
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