修業時代の記憶

かつて、茨城県にある道場に毎月、鍼灸修行に通っていました。

その頃の思い出です。

過去に『いやしの道 機関紙』に投稿した文章の修正版です。


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曙色。または橙色。

朝陽が差し込み白壁を染めていく色を見ていた。


冷たい空気。白い息。足が痺れて立てない。

永遠のように感じる座禅は睡魔との闘いでもあった。

思い返してまず浮かんだのは夢現に見ていた壁の色。

永遠に感じる痛苦の中で、永遠を感じさせる色が私をみていた。

先生の講話が好きだった。

難解すぎて心地良過ぎて、まさかというかやはりの気絶。此の山中に来って道の爲に頭を聚めたというのに恥ずかしい。情けない。

それなのに私はあの数年間で、使い切ることのできない資産を内に築き、枯れることのない源泉を掘り起こすことができた。気絶していたくせにこの効能。同じ空気を吸わせて頂くことが、殊の外大切だったのかもしれない。

二十代の青春は寝ても覚めても接心と共にあった。

「染まらない、流されない、持て囃されない」

先生のこの言葉を胸に刻んでこれからもこの道を邁進していきたい。