2023.10.05 00:45迷い「 」はしないよ今はどうかわかりませんが、おそらく日本の食卓では「迷い箸はしないよ」という躾がなされてきたと思います。それをもじって、我々鍼灸師は「迷い鍼はしないよ」と肝に銘じたい。勉強会参加者につぼを取らせようとすると、人に見られていることを意識するせいか誰もがみな自身なさげに、または迷いの果てにつぼを取ります。だから時間がかかります。しかもそうやって取ったツボは、たいていズレています。たいていは一番最初の直感が正しい。そう教えてあげても、その通り素直にやれる人は多くありません。ここで素直にできるというのはその人の頭と精神の柔らかさを現わしています。勉強すれば勉強するほど知識が邪魔をして、迷いは加速していきます。勉強するなと言いたい訳ではありません。知識を積み重るこ...
2023.09.28 00:45どこから刺絡をするか刺絡をする時に「ここが痛む」と場所を教えてくれる人がいます。ここだここだと一生懸命に教えてくださる。わたしを助けてくれているんだと思うと、親切に応えてそこからやってあげたくなる。しかし実際に刺絡をしてみると対して黒い血もでず効果もそこそこ。微妙でした。患者さんが辛いと思う所から刺絡したところで効果がでるとはいえません。次回。患者さんの訴えは無視して、手の感覚を使って病所を探してみると、患者さんが「ここ」と訴える所から少し離れたところにそれはありました。そこから刺絡をしていると、それはもうどす黒い血がたくさん出ました。あたりです。感覚や勘は否定されがちですが、それを信じてやるのも間違いではないという話です。
2023.09.22 23:45ストレス・自律神経・上咽頭「ストレスが原因だ」という話はよくありますが、実際のところなんの解決にもなりません。ほとんど何もいっていないのと同じです。「自律神経の乱れ」というのももっともらしいですが同様です。最近は「慢性上咽頭炎」がメジャーな概念です。解剖学的部位に原因を定めた点では確かに異なりますが、そこからが雑過ぎます。ストレス説と大差がありません。人をみればとりあえずBスポットをやっている。当たるも八卦当たらぬも八卦の世界です。虚が主体の咽頭炎もあれば、実が主体の咽頭炎もあります。十二経絡でみても同様です。そういう発想がないまま、上咽頭だけをみていても非効率です。陰と陽、寒と熱、様々な視点から捉え直すのが東洋医学の良いところです。それはとても具体的だからです。例えば脈やお腹...
2023.09.21 00:10絵的に映えない鍼ゴルフ中に大胸筋を痛めたようです。胸をそらせたり張ると特に痛い。さっそく調べてみると足の太陽膀胱経に異常がありました。飛揚穴のあたりです。一瞬だけ鍼を当ててみると痛みが止んだので間違いありません。そんなもんでも効きます。TVや雑誌などの影響だと思いますが、鍼を体全体に何十本も打つものだと思っている人は結構います。私がするような針はそうではないので「絵的」に映えません。そもそも技術的により難しいのでやれる人が多くありません。そんなこんなで世間に露出することが少ないため、変わった鍼をする人ということになりますが、本来鍼はおそらくこういうものであったろう、これが王道だろうとわたしは思っています。霊枢をみると古代の治療の記述があり、そこにそういった痕跡があるか...
2023.09.12 00:35麻黄湯にユンケル「巷ではやばいことになっていますよ・・」という彼の表情は呆れ半分の苦笑いでした。巷で耳にしたやり方です。麻黄湯にユンケルを合わせて飲むという。とあるお母さんたちの界隈で流行っていたそうな。傷寒論輪読会の参加者が教えてくれました。頭痛、発熱、悪寒、節々が痛いという症状を見ると確かに麻黄湯そのもののようです。麻黄湯がインフルに効く場合は多いと私も思いますがイレギュラーもあります。そこでこじれるということもあります。西洋薬嫌いの反動で漢方ならとにかく副作用がないと考えるのでしょうが、適当な処方でなければ外しますし、ちゃんと悪化します。下手な事をするくらいなら何もしないでおく。なにもしないことは中くらいの医者にかかったようなものだという考え方が昔からあります。
2023.09.09 00:05焼け石に水治療。そして水滴石を穿つ。慢性的な頭重感と四肢の痺れ。手足のしびれは手袋・靴下状になっている。多発神経炎に近いですが、病院での各種検査では特に異常はない。肥満、頭重感、上腹部のつっかえ、悪心、倦怠感、舌湿やや紫暗に白膩苔、脈弦滑。職業柄、一日にカレーを7杯食べるような日常。。。食毒に間違いなし。やや小便不利。その他の腎系統の不調はない。治療するも「多少マシ」という程度。12回目の治療で初めて頭痛が取れました。手足の痺れはなかなか取れずらいものの徐々に減退。「一日にカレー7杯」とか「パンを15個」という話を聞いた時点で、「それだけ食べる生活を続けながら治すのは難しい」という話はしましたが、「止められない。だから食べながら治してほしい」という。「焼け石に水になりますよ」というとそれ...
2023.08.22 00:52コロナ後の頭痛コロナ後の頭痛を訴えて来院される方は多いです。大抵はよくなります。頭痛だけならそれほど時間も回数もかかりません。ところが、何回やってもなかなか取れない人がいます。色々手を尽くしても「少し減ったかも」くらいの様なので、手がなくなってしまいました。それでも、あの手この手を考えることで鍼灸師としての限界値を広げることができます。わたしはずっとそうやってきました。あの先生がこういったから、この本にこう書いてあったから、、、そういうことも役には立ちますが、臨床知を真に磨いてくれるのはこういった場面です。それでもどうにも太刀打ちできないこともありますが、この方の頭痛に関してはほとんど解消されつつあります。糸口が見つかり幸いでした。
2023.06.27 00:55邪気について邪気などというと、お祓いとか悪霊とか、そういうイメージを持たれるのは普通かもしれません。”ヤバいやつら”が降りていくで説明しましたがそういうのではありません。例えば術者の体感としては、邪気が抜けていく時には「ぷるるる―ん」とか「ざわざわ~」といった感じがします。擬音化するとなんだか可笑しいですが、そうすると患者さんの様態がその場で好転したりします。ある種の「波動」なのでしょう。別に邪気など分からなくて鍼灸治療は可能ですが、やれることが広がる・深まるということはできるでしょう。邪気といってもなにか悪霊みたいなものとは違うことが分って頂けるのではないかと思います。
2023.06.06 01:50膝を切る前に昔、膝蓋靱帯を事故で失い、大きな傷跡がある男性です。その古傷が急激に痛み、腫れてきてしまった。びっこひいてご来院。膝が曲がらず靴下も履けないそうです。たしかに炎症がありますが心当たりとなる原因はない。整形外科にかかるもただ「手術が必要」とのことです。ただ、なぜ手術が必要なのかは聞いてもよくわかりません。(よくわからないのに簡単に手術してしまうのか??)根拠が乏しいなかでも行われる手術って結構あります。画像診断によって必ずしも原因が特定できるわけではないので、一般に思われているほどあまり当てになりません。切ったけど良くならなかった腰痛や膝痛はそこそこ見聞きします。***拝見させて頂くと、そもそもが問題が多い膝で、膝蓋靱帯の有無や手術後の癒着以外にも見るべ...
2023.05.16 00:30肩に効く意味がわからない肩が挙がらないそうです。ご自分で動かしても痛いですが、わたしが動かしても痛い。日に日に痛みが増してきている。こういう場合は関節包に炎症があることもあり嫌な感じです。棘下筋や小円筋、三角筋前部にダメージが目立ちます。それが腎経の刺針でめっちゃ緩みました。経絡の走行では肺経・大腸経、小腸経・心経に当たる場所に問題が現れていたといえます。肺経・大腸経とは腎経とは、子午関係として。少陰繋がりで腎経が心経に。。。ですが、肩甲骨に効く意味が分からない。太陽小腸経/膀胱経に対して少陰腎経は表裏関係にあるので、効くとはいえそうですが、こういうことを言いだすとなんでもあり。なんとでも言えるんですよね。数多くの理屈の中から、どの組み合わせが最適なのかを割り出すのは容易では...
2023.05.12 23:35「い、色でもついてるんですか?」そんなお言葉を頂き、嬉しく思ったという話です。わたしの治療は触診から始まります。人が「頭が痛い」と言っているのに、手を取って指先を見つめたり、ふくろはぎに触ったり、、、そのうちセクハラで訴えられなければいいのですが。無遠慮にべたべたと触って、改めてすみません。あまり触診をしない鍼灸治療もありますので、そういう治療ばかり受けてこられた方は驚くかもしれません。しかしいまのところ、わたしは人体に現れる反応を触診で拾うことを大切にしています。以前のわたしの治療はそうではありませんでした。あまり触診をしませんでしたし、そもそも触診をしてもぜんぜんわからない。どこがどう悪いのかかなりぼんやりしており、かなり悩みました。あまり関係のない反応を拾ったりもしていました。...
2023.05.03 23:55”ヤバいやつら”が降りていく足に鍼をしていた時のことです。その患者さんがそうおっしゃいました。おもしろい表現です。その”ヤバいやつら”は体内の奥深くに隠れて、潜伏していたかのようだと言いました。